宮崎県立美術館のみどころ マグリットやシニャックの名画がみれる!

(スポンサーリンク)

宮崎県立美術館について

宮崎県立美術館は、宮崎市にある県立の美術館で、近現代美術を中心に、多彩なコレクションと企画展を展開している施設です。宮崎県総合文化公園の一角に位置し、緑豊かな環境の中でアートを楽しめるのも魅力の一つです。

また、美術館のコレクション展は無料で観覧することができ、マグリットやシニャックといった海外の巨匠たちの絵を気軽にみることができます。公園内のウォーキングがてらに美術館に寄ってみるのもいいかもしれませんね。

宮崎総合文化公園

(スポンサーリンク)

目次

所蔵作品紹介

美術館のコレクションの総数は約4,200点にのぼり、郷土出身の作家や海外の優れた作家の作品を収蔵しています。中でも、シュールレアリスムを代表するマグリットの作品や、新印象派シニャックの点描の作品はみどころです。

では、コレクションの中から何点か紹介していきましょう。

※「作品解説」をクリック(またはタッチ)すると解説が開きます。

ルネ・マグリット
『現実の感覚』(1963年)

油彩、カンヴァス、172.5×116.0cm
作品解説

ルネ・マグリット(René Magritte, 1898~1967)は、ベルギー出身のシュールレアリスムの画家として知られています。シュールレアリスムとは、第一次世界大戦後にヨーロッパで広がった芸術運動で、無意識や夢の世界を重視し、現実の常識を超えた表現を追求するものです。フランスの文学者アンドレ・ブルトンは、これを「理性の制約を取り払い、無意識の思考をそのまま表現しようとする芸術」と定義しました。

マグリット作 イスラエル博物館蔵 「ピレネーの城」

1950年代になると、マグリットは本作のような「石」をテーマにした作品を描くようになります。その代表作が、イスラエル博物館に所蔵されている「ピレネーの城」です。これは、マグリットがニューヨークの弁護士ハリー・トルクジナーの依頼で制作した作品で、依頼主は「オフィスの窓から見える見苦しいビルを隠すための絵」を求めていました。

マグリットの最初の提案は「石の上に建てられたお城」でしたが、ハリーはさらに「そのお城を空中に浮かせる」というアイデアを加え、それによって「ピレネーの城」が生まれました。

その流れを受けて、後年に描かれたのが本作『現実の感覚』です。ここでは城が省かれ、代わりに空には三日月が浮かんでいますが、構図は「ピレネーの城」とほぼ同じです。

マグリットはこの作品を含め、「石」をモチーフにした作品を数多く残しました。 石は通常、無機質で無個性なものとして認識されます。しかし、それが巨大になり、さらに宙に浮かぶことで、まるで生命を持っているかのような不思議な存在感を放ちます。

シュールレアリスムの本質である「常識や理性からの解放」という観点で考えると、無個性な石を非現実的な状況に置くことで、そこに神秘性を見出そうとしたのではないでしょうか。現実と非現実の狭間に揺らぐこの作品は、まさに彼の思想を象徴する一枚といえるでしょう。

ルネ・マグリット
『白紙委任状』(1966年)

グワッシュ、紙、39.9×47.6cm
作品解説

本作『白紙委任状』は、マグリットの最晩年に描かれた作品です。穏やかな雰囲気の林の中を、女性が乗った馬が歩んでいます。しかし、その姿は木の幹や背景によって部分的に隠されているように見えながら、実際には馬や騎手は分断されることなく連続しているという視覚的な矛盾を孕んでいます。

マグリットは本作で、「見えるものの不確かさ」と「隠されたもの、見えないものの存在」を表現しました。私たちは通常、目に見えるものを基準に物事を判断しますが、見えないもの=存在しないものではない という点をこの作品は示唆しているといえます。特に現代社会では、視覚的な情報や外見の印象が重視され、本質的なものが見落とされがちです。本作は、そうした表面的なものに惑わされる現代人への警鐘とも受け取ることができます。

ちなみに、「白紙委任状」というタイトルについて、マグリットは「彼女(絵の中の騎手)がそうするのを許可するもの」と述べています。これは、視覚に頼らずに物事を見ることは誰にでも可能であり、私たちはそれを自由に選択できるという人間の可能性についての示唆とも考えられます。つまり、この作品は、私たちが何を信じ、何を見ようとするのか——その判断を委ねられていることを暗示しているのかもしれません。

ポール・シニャック
『サン・トロペの松林』(1892年)

油彩、カンヴァス、64.6×80.5cm
作品解説
ポール・シニャック(Paul Signac, 1863~1935)

サン・トロペはフランス南東部に位置する町で、ポール・シニャックがたびたび訪れ、風景画を描いた場所です。シニャックはサン・トロペの港を中心に数多くの作品を残しましたが、本作のように丘から地中海を望む風景を描いたものもあります。

シニャックをはじめとする新印象派の画家たちは、印象派の筆触分割をさらに発展させ、科学的な色彩理論に基づいた点描技法を確立しました。印象派の画家たちが外光の移ろいを捉え、自由な筆致で描いたのに対し、新印象派の画家たちは一定の筆触で色を配し、視覚混合によって色彩の効果を生み出しました。

本作でも、細かな点描による筆触分割が見事に活かされ、サン・トロペの穏やかな情景が鮮やかに表現されています。光の当たる部分と影の部分、さらには山々の遠近感を描き分けるために、点描の色の組み合わせや比率が巧みに調整されているのが分かります。その繊細な色彩の響き合いによって、静けさと暖かな陽光に包まれた地中海の風景が、まるで目の前に広がるかのような印象を与えます。

シニャック作 国立西洋美術館蔵
「サン・トロぺの港」

ポール・シニャック
『ヴェニス・サルーテ教会』(1908年)

油彩、カンヴァス、72.5×90.9cm
作品解説

ポール・シニャックはヨットを愛し、生涯にわたり海や水辺の風景を描き続けました。そのため、彼の作品には港や海辺の情景が多く見られます。本作『ヴェニス・サルーテ教会』は、1908年にシニャックが「水の都」ヴェネツィアを訪れた際、当地の象徴的な建築であるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂を題材に描いたものです。

本作は先に紹介した「サン・トロペの松林」と同程度の大きさの作品ですが、その点描の大きさに明確な違いがあります。1900年代になってからシニャックの筆致は細かなものからより大きなものへ変化していきました。初期の作品と比べるとモザイク画のような印象を受けますが、こうした試みは自然の色彩を再現するだけにと止まらず、色彩そのものの調和を意識したものとなり、フォービズムへと引き継がれていきました。

ピエール・ボナール
『葡萄を持つ女』(1911~1912年)

油彩、カンヴァス、73.7×61.6cm
作品解説
ピエール・ボナール(Pierre Bonnard,1867~1947)

ピエール・ボナールはナビ派の画家です。浮世絵やゴーギャンら綜合主義の影響を受け、装飾的でデザイン性に富んだ作品を生み出しました。

しかし1900年代後半になると、自然光へ注目するようになり、持ち前の色彩を活かした画面構成に、光の効果が加わるようになりました。その背景には南フランスのサン・トロペへの滞在があります。

1911年、地中海の光があふれる雰囲気を気に入ったボナールは、その年の間に3回もサン・トロペを訪れ、絵を描きました。本作『葡萄を持つ女』はその時に制作された作品のひとつで、逆光の中で地中海を背景にしたマルト夫人が描かれています。

同時期の画家たちがフォービズムやキュビズムといった前衛的なスタイルを模索する中、ボナールは自然光の探求に重きを置くという、ある意味時代を逆行するような道を選びました。しかし、この自然描写への姿勢こそが色彩の探求をさらに深め、「色彩画家」としての成熟へとつながっていきました。

中澤 弘光
『海苔をとる娘』(1913年)

油彩、カンヴァス、129.0×160.0cm
作品解説

中澤弘光(なかざわ ひろみつ、1874~1964)は、明治から昭和期にかけて活躍した日本の洋画家です。洋画家としての活動に加え、与謝野晶子の『新訳源氏物語』の装幀や雑誌『新小説』『中学世界』の表紙絵・口絵などを手がけ、優れたデザイナーとしても知られています。また、旅行を好み、日本各地を訪れて風景や風俗を描きました。

中澤による絵葉書のデザイン

本作『海苔をとる娘』は、中澤が静岡県の清水港付近を訪れた際、海苔の収穫をする娘の姿に着想を得て制作されました。画面には、労働に勤しむ少女の静かな佇まいが印象派の画風で描かれている一方、羽衣をまとった天女が幻想的に浮かび上がり、現実と神話が交錯する構図となっています。この表現は、同地・三保松原の羽衣伝説を重ね合わせたものであり、現実の風景の中に神話的なイメージを織り込むことで、日常の情景に神秘性を見出そうとする中澤の意図が感じられます。

児島 虎次郎
『少女像』

油彩、カンヴァス、81.1×65.4cm
作品解説
児島虎次郎(こじま とらじろう、1881~1929)

児島虎次郎は、岡山県倉敷市にある大原美術館の美術作品をヨーロッパで収集したことで知られる一方、洋画家としても活躍した人物です。

ベルギーのゲントに留学した際、エミール・クラウスに師事し、ベルギー印象派の一派「ルミニスム」の影響を受けました。ルミニスムはフランス印象派の流れを汲みながら、フランドル地方の写実的な伝統を保ちつつ、光と色彩の表現を重視する画風が特徴です。クラウスは「各自の個性を活かして描くこと」を重視しており、虎次郎もその教えに従い、自らの画風を確立していきました。

虎次郎は、印象派のタッチを取り入れつつ、日本の風俗や風景を題材にした作品を制作しました。代表作として「和服を着たベルギーの少女(大原美術館蔵)」や「秋(フランス国立近代美術館蔵)」が挙げられます。帰国後には、朝鮮や中国を訪れ、現地の風俗を取材し、チマチョゴリを着た少女を題材にした作品も描きました。

本作『少女像』の制作時期は不明ですが、「秋」と同様にチマチョゴリを着た少女を描いていることから、1920年前後の作品と推測されます。鮮やかな色彩と光の表現によって、少女の繊細な表情や穏やかな雰囲気が際立ち、西洋と東洋の融合を感じさせる作品となっています。その印象派の技法を活かしながら東洋の画題に向き合う姿勢には、クラウスの教えを受け継ぐ虎次郎の独自の表現が見て取れます。

児島虎次郎作 国立近代美術館(パリ)蔵
「秋」(1920年)

※コレクション展では作品の入れ替えが行われるため、上記の作品が常に展示されているとは限りません。展示作品の詳細については美術館のHPをご確認ください。宮崎県立美術館HP

宮崎県立美術館の基本情報

所在地:宮崎県宮崎市船塚3丁目210

(スポンサーリンク)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次