大塚国際美術館の見どころ。陶板名画のこだわり。

大塚国際美術館は、徳島県鳴門市にある美術館です。
当館では、世界の名画が堅牢性の高い「陶板」で再現・展示されており、一部を除き触れることが可能です。その数は約1,000点にのぼり、鑑賞ルートは約4kmにも及びます。じっくり鑑賞した場合、1日ではとても回り切れないため、数日に分けて訪れることをお勧めします。

ちなみに美術館は山の斜面に埋められたような独特な構造です。これは、所在地が国立公園内にあり、自然公園法によって建物の高さが13mを超えてはいけないという制限があるためです。その結果、屋上の庭園が1階、エントランスが地下にあるという、ユニークな造りとなっています。

画像:by EMS-62
目次

館内

エントランスに入り少し長い(41m)エスカレーターを昇ると地下3Fの展示エリアへ入ります。
地下3Fから地上2Fまでが展示室となっており、各階は時代でおおまかに区分されています。

地下3F 古代・中世エリア

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地下2F ルネサンス・バロックエリア

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地下1F バロック・近代エリア

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地上1F~2F 現代・テーマ展示エリア

「テーマ展示」では、「食卓の情景」や「空間表現」等の独自のテーマごとに展示されており、様々な時代の作品を見比べることができます。

大塚国際美術館1~2F-1
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環境展示

大塚国際美術館では、遺跡や教会などの壁画を空間ごと再現した「環境展示」が大きな見どころです。原寸大の大きさにこだわっており、礼拝堂などはまるで現地にいるかのような迫力で楽しめます。

システィーナ・ホール(地下3階展示)

大塚国際美術館 システィーナ・ホール-1
大塚国際美術館 システィーナ・ホール-2
大塚国際美術館 システィーナ・ホール-3
大塚国際美術館 システィーナ・ホール-4
大塚国際美術館 システィーナ・ホール-5
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イタリア・ルネサンスの巨匠、ミケランジェロ・ブオナローティの作品「システィーナ礼拝堂天井画および壁画」を再現したホールです。もちろん、絵の部分は陶板で作られています。

システィーナ礼拝堂はバチカン市国のバチカン宮殿内にあり、1508年にローマ教皇ユリウス2世がミケランジェロに天井画の描き直しを依頼し、1512年に完成しました。さらに1533年から1541年にかけて、教皇クレメンス7世の命を受け、主祭壇背後の壁に「最後の審判」を描きました。

本物のフレスコ画は、数百年の経年劣化により修復を重ねてきましたが、大塚国際美術館の陶板版は劣化の心配がなく、半永久的に鑑賞できます。現地に行かずとも、この空間をお手軽に楽しめるのが大きな特徴です。

スクロヴェーニ礼拝堂(地下3階展示)

大塚国際美術館 スクロヴェーニ礼拝堂-3
大塚国際美術館 スクロヴェーニ礼拝堂-2
大塚国際美術館 スクロヴェーニ礼拝堂-1
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スクロヴェーニ礼拝堂は、イタリアのパドヴァにある礼拝堂で、ジョット・ディ・ボンドーネが1303年から1305年にかけて描いたフレスコ画が有名です。大塚国際美術館では、この礼拝堂を再現し、作品をゆっくりと鑑賞できます。オリジナルでは1度に25人、20分の制限がありますが、ここではそのような制限はありません。

貝殻のヴィーナス(地下3階展示)

南イタリアのポンペイ市で発掘された「貝殻のヴィーナス」も展示されています。ポンペイは火山噴火により埋もれた都市ですが、発掘によって多くの美術品が保存されてきました。大塚国際美術館では、遺跡の雰囲気を再現し、屋外で「貝殻のヴィーナス」を展示しています。

大塚国際美術館では遺跡として公開されているオリジナルに倣って「貝殻のヴィーナス」を屋外(中庭)に展示しています。

モネの「大睡蓮」(地下2階展示)

大塚国際美術館 モネの大睡蓮-4
大塚国際美術館 モネの大睡蓮-3
大塚国際美術館 モネの大睡蓮-5
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大塚国際美術館の「大睡蓮」は、フランス・オランジュリー美術館にあるクロード・モネの「睡蓮」を複製したものです。モネが晩年に描いたこの大作は、オランジュリー美術館の「睡蓮の間」に展示されています。

大塚国際美術館では、陶板の強度を活かして、屋外に「大睡蓮」を展示。自然光の中で変化する睡蓮の姿を楽しむことができ、モネの意図を最大限に尊重しています。周囲には池があり、本物の睡蓮も咲いており、見ごろは6月中旬から9月です。

大塚国際美術館 モネの大睡蓮-1
大塚国際美術館 モネの大睡蓮-2
大塚国際美術館 モネの大睡蓮-6
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陶板名画へのこだわり

陶板名画製作工程

陶板名画は、滋賀県にある大塚オーミ陶業株式会社で製作されています。

製作の主な工程は次の通りです。まず、下地の陶板へ印刷された画像を転写し、焼成します。その後、印刷では表現できない色は、釉薬を用いてオリジナルに近づけます(加筆)。この加筆と焼成の工程を繰り返すことで、陶板名画は完成するのです。

釉薬を使った加筆では、焼成後に色が変わるため、陶器の専門家が焼成後の色を予測しながら着色を行います。また、絵の質感も釉薬で再現でき、光沢のあるものやマットな質感のものも再現可能です。釉薬の色の種類は、なんと約2万色もあるそうです。

絵肌の再現

ファン・ゴッホ作「種まく人」

陶板名画は、色だけでなく、絵肌の再現にもこだわっています。例えば、ゴッホの『種まく人』を間近で見ると、彼の特徴的な筆触まで忠実に再現されていることがわかります。

「種まく人」のマチエール
近くで見ると絵具を盛ったようなマチエールを確認することができます。

この絵肌は、実際の絵具の盛り上がりではなく、成形の段階で下地に凹凸をつけることで表現されています。つまり、製作の初期段階から絵具の凹凸を想定して成形されているのです。また、美術館内の遺跡壁画も同様に、経年劣化による自然な凹凸までもが細かく再現されています。

B3F環境展示「鳥占い師の墓」
B3F環境展示「聖テオドール聖堂」





まとめ

現在、絵画は芸術として注目されていますが、カメラやビデオが普及する以前は、記録の役割が大きかったのです。そのため、フレスコ画や油絵具など、耐久性のある技法が発展し、多くの作品が今日まで残されました。しかし、数百年もの時間が経つと、作品は劣化したり、盗掘によって破壊され、元の色や形が変わってしまうこともあります。
経年による劣化は避けられませんが、作品を後世に残すためには、その劣化に対抗することが求められます。

そこで、大塚オーミ陶業株式会社が考案したのが、陶板を用いた絵画や写真の製作技術です。陶板は1300℃の窯で約8時間焼かれ、高温で焼成された陶板は2000年以上変色や腐食をしないとされています。また、釉薬による色の再現は約2万色あり、成形の過程では絵肌も細かく再現できます。この技術が1998年に開館した大塚国際美術館の「陶板名画」に活かされ、多くの陶板名画が誕生しました。

陶板名画は、ただの複製画にとどまりません。その耐久性、絵肌や質感、色までを忠実に再現する技術により、他の複製画とは一線を画しています。特にシスティーナ礼拝堂やスクロヴェーニ礼拝堂の壁画を原寸大で一度に鑑賞できるのは、大塚国際美術館だけです。これは一見の価値があると言えるでしょう。

本格的な海外の絵画を鑑賞してみたいけれど難しいと感じている方、美術に興味はあるけれど海外まで行くのはちょっと、と思っている方には、大塚国際美術館を一度訪れてみることをお勧めします。

大塚国際美術館の基本情報

所在:徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1

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